ムーンライト
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![]() fan art by NEO |
| 「いったい今日は何でそんなに不機嫌なんだ?」 カプセルコーポレーションの朝。 小鳥が囀るさわやかな朝。 その明るさとは全く無関係に ブルマとヤムチャの間には緊張感が溢れていた。 たまらずに声をかけたのはヤムチャのほうだった。 もうとげとげしい沈黙に我慢ができなかった。 ブルマの感情の起伏はあまりにも激しい。 昔からわかっていることではあるのだが。 何時も折れるのは彼のほうだった気がする。 振り返ったブルマはジロリ、とヤムチャをにらみつける。 一瞬ヤムチャは後ずさりしそうになった。 「本当になぜだかわからないの?」 ブルマは冷たく言い放った。 ヤムチャはつばを飲み込んだ。 心当たりがあるらしかった。 そんなヤムチャからブルマは目をそらさない。 ブルマは続けた。 「どうして朝帰りなの?」 「え?」 「私は朝までおきていたわ」 ヤムチャは小さい声でつぶやいた。 「…なんで昨日に限って…」 「ああそう、まってちゃ悪かったわけ?」 「誰もそんなこと言ってないじゃないか」 ブルマはすたすた歩き出した。 その後をヤムチャが追いかける。 急に笑顔になるヤムチャ。 機嫌を取り出したのが丸分かりである。 「なんだよ、飲みにいってただけじゃないか」 ブルマの進む先へ先へとまわろうとする。 「あら、そう」 ブルマはプライベートルームに入っていく。 ヤムチャも続いてはいっていった。 ブルマは大声をあげた。 「はいってこないでよっ!」 ブルマが突然本を投げつけた。 「バカにしないでよっ」 本はヤムチャの額に音を立ててあたる。 ヤムチャはあえてよけなかったのだ。 地球人の中では1、2を争う戦士ヤムチャ。 彼がブルマの投げるもの程度で痛みを感じることはありえないのだ。 「何でお前を…バカになんかするものか」 ヤムチャはうっすら笑みを浮かべる。 興奮した子猫のようなブルマ。 近づくヤムチャに手当たりしだいものを投げつける。 ヤムチャはかまうことなくどんどんブルマに近づいていく。 「わかっているんだ」 「なによっ」 「お前が怒ってない事をさ」 「うるさいっ!」 ヤムチャから漂うかすかな香り。 淡い花の様な甘い香り。 ブルマにそれがわからないはずがなかった。 その香りを匂わせながらヤムチャはブルマに近づいてくるのだ。 「お前は…」 ヤムチャがブルマを壁際に追い詰めた。 暗い影がブルマにかぶさってくる。 ヤムチャの大きな体が迫ってくる。 ブルマは精一杯腕を突っ張る。 「そういうけれど俺からは離れられないんだ…」 「バカッ」 悔しかった。 何でこの男はこうなんだろう? 私がヤムチャからはなれられないってどういうこと?? たとえ体の関係を持ったからといって 女が男の所有物になるはずがない。 私は私だ。 一人の人間だ。 たとえ男に自分の体を与えたからといっても 心まで渡したわけはないのだ。 「お前は何時も不機嫌だよな」 「あんたのせいよ」 「でもさ」 後ろは壁。 ブルマは思わずしゃがみこんだ。 頭を抱え、小さくなった。 「抵抗するのか?」 「ごまかさないでよ」 「なにを?」 ヤムチャはブルマの身体を抱きしめようとする。 その手をブルマは何度も振り払う。 「抱いてしまえばおとなしくなると思ってるの!」 「…ちがうの?」 「やめてよ」 「かえってその気になるぜ」 「や…」 「うそつけ」 左手首をつかまれてブルマは体をもち上げられる。 「でてってよ・・・」 「いやだ」 ヤムチャは唇をちかづけた。 たくましい筋肉がブルマに押し付けられる。 かすかな香りがブルマの鼻をつく。 ブルマはみてしまった。 ヤムチャの首筋についている赤いあざを。 「やだ!」 もう堪えられなかった。 別の女と関係をもちながらなおも自分を抱こうとするヤムチャに。 ヤムチャの腕が何度も伸びてくる。 ブルマはつめを立てて暴れた。 手当たり次第にものを投げつけ足でヤムチャを蹴っ飛ばす。 …ヤムチャの顔が少し翳った。 思うどおりにいかないブルマに対して不満をあらわにしていた。 突然無言で背後からブルマの体をきつく抱きしめた。 胸が締め付けられて息が出来なくなる。 体中をわしづかみにされて痛みに声があがった。 「…やだ…やだ…やめて!!」 そのとき。 開きっぱなしのドアの向こうに人影が現れた。 ベジータだった。 |
2002年6月22日文庫連載分を加筆したものです。 |
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