| 4.Darkness...闇の中で |
by Neo |
| 西の都に夜が来た。 底なしの闇である。 どこにも明かりがともることはない。 見渡す限り真っ暗な闇である。 絶望的に、暗い。 それも仕方のないことであった。 明かりをつければ人造人間達がやってくるからだ。 彼らは嬉々としてやってくる それも気まぐれに。 何の脈絡もなく、だ。 黒髪で華奢な少年の姿をした17号。 ブロンドの髪で肌が抜けるように白い18号。 美しい少女だ。 2人とも美しい切れ長の瞳を持っている。 然しその恐ろしさは見た目では想像がつかない。 この美しい双子が世界を地獄に変えていくのだ。 彼らに哀れみや悲しみの感情はない。 あるのは破壊する喜びと 逆らう者への怒りだけである。 そして彼らは毎日多くの人命を奪い、 数え切れない幸せを踏みにじっている。 彼らは思うが侭に楽しんでいるだけだ。 破壊と殺戮を。 そしてれがここでの現実だ。 目をそむけようもない。 人々は息を殺して祈る。 再び夜明けが来ることを。 生きて朝日を拝める朝を。 然し祈りは通じない。 闇の静寂は毎日のように破られるのだ。 突然起きる大音響。 立ち上る火柱。 何本も何本も天に届く。 鼻をつく異臭。 瓦礫の山。 警察も消防も近づけない。 誰だって殺されたくないのだ…。 のこるのはただ 焼き尽くされた地面だけ。 その場所にも多くの人が生活していたはずなのだ。 入院中のトランクスの耳にもその様子は届いてくる。 彼は常人以上に耳がいい。 そして様々な気を感じることが出来る。 勿論人造人間に気はありえない。 でも彼には聞こえてしまうのだ。 助けを求めて息絶えていく人々の 悲壮な声が…。 聞こえなければ 知らなければ どれだけ楽だろう! トランクスは歯を食いしばる。 歯が折れんばかりに音を立てる。 拳を握る。 十分に手のひらさえ握ることの出来ない自分の体。 動けない自分に怒りが沸いてくる。 情けなくて、情けなくて体が張り裂けそうになる。 戦えない戦士など意味がない。 意味がないんだ。 自分の弱さに反吐がでる。 闘志は、ある。 闘いたい。 たとえ力尽き骸をさらす事になったとしても。 それが自分の生き方だと思っている。 然し首さえ持ち上げられないのが今の自分なのだ。 毎夜声にならない小さなうめきをトランクスは漏らした。 夜明け。 ブルマも眠れない夜を明かした。 24時間の付き添いはもういらないのだが 目を離すとトランクスが消えてしまうような気がした。 ベジータに似てきた。 ブルマは横たわる息子の横顔を見つめる。 激しく そして静かに怒りを秘めた瞳。 それなのに透き通っていて どこかさびしい瞳。 この目はベジータの目だ。 間違いなくベジータの目だ。 トランクスも夜はねむれなかったのだろう。 うとうとと眠りかけていた。 息子に語りかける言葉などもっていなかった。 包帯だらけのその手を黙ってそっとつつむ。 そして今は我慢しなさいと、心の中で祈るのだった。 また今夜も夜空が赤く染まるだろう。 1ヶ月たってようやくトランクスは歩けるようになった。 常人よりもはるかに早い回復である。 それでも長い一ヶ月であった。 もうこの世界にはドラゴンボールも仙豆もない。 メディカルマシーンを作ろうとも機材が足りない。 いくらサイヤ人の血を引いているからといっても トランクスは生身の身体である。 血も流れれば痛みもあるのだ。 それでもトランクスは闘わねばならない。 最後のサイヤ人として。 あの子供たちはどうしているのだろう。 俺を助けてくれた小さな子供たちは。 トランクスはそれも気になっていた。 少しでも早く助けてくれた子ども達にあいたいと考えていた。 そしてちゃんとお礼を言いたかったのだ。 トランクスの脳裏に浮かぶ 髪の長い黒い瞳の女の子。 ちらりとしかその姿を見ることは出来なかった。 しかし覚えている。 その気の暖かさを。 心が救われるようなやわらかくて儚げなその気を。 もし彼女らが救急車を呼んでくれてなければ 自分はもう死んでいたのかもしれなかった。 ただ。 十分戦えない身体で出歩いて 人造人間に出くわしたときのことを考えると さすがの彼も慎重にならざるを得なかったのだ。 もし出会ってしまったら。 やはりトランクスは戦うだろう。 最後の戦士として。 そして気高く散っていくに違いない。 父親の様に。 悟飯のように。 それがサイヤ人なのだ、たぶん。 今の自分に人造人間は倒せないのだ。 それは十分判っている。 また彼らがトランクスを見逃すとも考えられなかった。 あえば必ず襲ってくるだろう。 人造人間たちは楽しんでいるのだ。 命をもてあそぶことを。 だから強くならねばいけないのだ、今は。 この体が動くようになったら 俺は過去に行く。 そして父さんに会うんだ。 俺のたった一人の父さんに。 トランクスは目を閉じた。 夢を見たくなったのだ。 夢の中でなら会いたい人に会えるはずだから…。 |
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